メカニズム

微生物製剤スラッジアウトのメカニズム解説

ヘドロの概要

 有機物を含んだ汚水などが流れ込む水底に堆積する汚泥をヘドロと呼んでいます。ヘドロをミクロの目で見ると微細な砂や粘土粒子が有機物の接着剤により連結された綿毛状構造となっています。(文献1,2)この構造の隙間に含まれる水(間隙水)には酸素がほとんど含まれておらず、有毒な硫化水素が溶けており普通の魚介類は生存できない環境となっています。このような環境では有機物の分解は進まず、汚水などの流入によって有機物の堆積がさらに進むという悪循環に陥るため、いったん底泥がヘドロ化すると容易には回復しない理由のひとつとなっています。

ヘドロ概要図

ヘドロとスラッジアウトの関係

スラッジアウトはこのようなヘドロ環境でも活動できる特殊な乳酸菌群、酵母菌群、紅色硫黄細菌群を主成分とした微生物製剤です。これらの菌の役割は次のとおりです。

ヘドロとスラッジアウトの関係図

乳酸菌群

乳酸菌飲料では馴染み深い菌で、自然界のいろいろな環境に住んでいます。スラッジアウトの乳酸菌は、特にヘドロ環境で働くように選択されたものです。

  • ヘドロをつなぎとめている接着剤である有機物を分解し、ヘドロを流れやすくします。
  • 有機物を分解して糖を酵母菌に供給し、酵母菌の活動を助けます。
  • pHを下げ、ヘドロをつくる元凶となっている硫酸還元菌の働きを抑えます。
有機物を分解し、糖を供給

酵母菌群

 酒や味噌など発酵食品の製造には欠かすことができない酵母菌ですが、自然界には至るところに生息しています。有機物を分解し、二酸化炭素やアルコール、アミノ酸類を生成します。

  • 有機物を分解して紅色硫黄細菌の餌であるCO2を生成し、紅色硫黄細菌の活動を助けます。
  • アミノ酸を生成し、乳酸菌の発育を助けます。
糖が大好き
CO2どうぞ

紅色硫黄細菌群

紅色硫黄細菌は、光エネルギーと二酸化炭素を使って光合成を行う光合成細菌のグループです。ヘドロ化した底泥中には、必ずといってよいほど棲息しています。この菌は普段は泥の中の硫化水素を利用して細々と生きていますが、スラッジアウトに含まる菌類の助けにより活性化し、大量に増殖すると次のような効果が表れます。

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  • 硫化水素を使って光合成を行い、この過程で硫化水素は水と硫黄に分解され毒性は消滅します。
  • 硫化水素の減少により間隙水中の酸素濃度が上昇し、硫化水素を発生させる原因である硫酸還元菌(酸素を極端に嫌う)の活動が抑制されます。
  • 酸素濃度の上昇により好気性微生物(有機物を分解する能力が高い)が増え有機物の分解が促進され、より多くの餌が乳酸菌や酵母菌に供給されるようになり有機物の分解が進むといった好循環が生れます。

ヘドロ分解後

3種の菌群の働きによりヘドロを分解し、硫化水素を減少させ、酸素を増加させます。ヘドロをつなぎとめている有機物が無くなると、ヘドロは砂粒としてその場に沈殿したり流されたりして消滅します。ヘドロが消滅するとヘドロ中に棲息していた有害赤潮プランクトンの休眠胞子も数が減り、赤潮の発生も抑制されます。酸素が増えることで有機物分解の主役は好気性の高い微生物が主役となります。そしてさらにエビやカニ類などの魚介類も有機物分解に加わり、良好な生態系が維持できるようになることが最終目的です。

紅色硫黄細菌

福岡県糸島市深江にて採取。内部にみえる丸い粒は細菌が硫化水素を分解した結果、生成した硫黄の顆粒です。

ヘドロ概要図

◎大分県佐伯市下入津:ヒラメ養殖場底泥

【H26年7月24日 微生物製剤施用前】

微生物製剤使用前

【H26年10月6日 施用74日】

施用

ヘドロが分解されて、砂が出現する。

文献
1.奥西一夫,いわゆるヘドロについて,国土問題,vol66,59,2005
2.松尾新一郎他,物理化学的見地からいわゆるヘドロの工学的性質について,
  土木学会論文報告集,第208号,1973

効果

スラッジアウトを導入した成功例

干潟底質改善:福岡県糸島市志摩船越(引津湾干潟)

【H25年5月】

微生物製剤使用前

【H26年3月(微生物製剤施用10ケ月)】

施用

アオサが消滅し、泥色が黒っぽい色から白っぽい色に

AVS*がH25年と比較し大きく減少 0.041mg/g・dry→0.006mg/g・dry

*AVS値:酸揮発性硫化物(この値が大きいほど、硫化物が多い)

【H25年5月】

微生物製剤使用前

【H26年3月】

施用

堆積汚泥が無くなり、臭気改善

【H26年9月(微生物製剤施用16ケ月)】

微生物製剤施用16ケ月

H25年5月には確認されなかった水産有用種のアサリ確認

約30年ぶりにマテ貝確認

カキ養殖場底質改善:福岡県糸島市志摩船越

【H25年12月(微生物製剤施用5ケ月)】

微生物製剤使用前

 

施用

例年に比べカキの付きがよく、収穫量約10%アップ

硫化水素が減ることによりカキの活力が増し、餌食いが良くなるため

身入り向上、付着生物の減少

真珠養殖場底質改善:長崎県佐世保市鹿町 東洋真珠(有)

【H26年4月:施用前】

真珠養殖場 全景

微生物製剤使用前

真珠貝養殖

施用
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【H26年4月2日 微生物製剤施用前底質分析】

微生物製剤施用区

pH値7.1 ORP値-260 温度17.0℃ AVS値0.373

微生物製剤使用前

対象区

pH値8.5 ORP値-205 温度18.0℃ AVS値0.189

施用

【H26年7月22日 底質分析】

微生物製剤施用区

pH値7.99 ORP値81 温度13.2℃ AVS値0.032

微生物製剤使用前

対象区

pH値8.03 ORP値-206 温度14.1℃ AVS値0.477

施用
約9ヶ月後
微生物製剤使用前

底泥のシルト分が殆ど無くなっている

AVS(硫化物)が1/11に減少

ORP(酸化還元電位)が

大幅に上がる

施用

底泥のシルト分は当初と変化なし

AVS(硫化物)が約2.5倍に増加

ORP(酸化還元電位)は

殆ど変化なし

【H27年4月2日(337日目) 底質分析】

バイオ製剤施用区

pH値8.21 ORP値-7 AVS値0.177

微生物製剤使用前

対象区

pH値7.96 ORP値-139 AVS値0.263

施用
微生物製剤使用前

左側:バイオ施用区

ヘドロ分が殆ど無く、臭みも無い。

右側:対象区 前回と変わらず

ヘドロ分が多く、硫化臭有り。

施用

左側:バイオ施用区 硫化物0ppm

右側:対象区 硫化物0.8ppm

河川底質改善:福岡県糸島市深江・柳川

【H26年6月】

微生物製剤使用前

【H27年7月(微生物製剤施用1年1ケ月)】

施用

堆積汚泥が無くなり、泥中も砂に変化

臭気を改善 近隣住民からの苦情なくなる

干潟底質改善:福岡市東区雁ノ巣

【H24年12月(微生物製剤施用)】

微生物製剤使用前

【H25年4月(微生物製剤施用4ケ月)】

施用

バイオ製剤下、シオフキ・アサリが多数確認

【H25年4月(微生物製剤施用4ケ月)】

微生物製剤使用前

酸化層 約1cmが約3cmに改善

ゴカイを多く確認

 

 

◎施用約6カ月後に現場で採取されたアサリ

施用

アサリは還元層で生育すると貝殻の

色が黒くなり、好気層だと白色になる

ことより微生物製剤施用後に底質が

改善されたことが示されている